以下は、株式会社NAC星野農場長のブログ記事です。
【教えていて思い知らされた。】
私は10年程有機農業に携わり、2014年からは愛知県西尾市にて
自然農(農薬も肥料も使わない草を生やす畑のやり方)
をやってきました。
YouTubeや畑体験イベント、SNSで自然農の事を発信していて、
これらに能動的に反応してくれる方々は自然農やオーガニックへの興味関心が高いです。
だから、いつの間にか
『無農薬無肥料でもこんなに育つんですよ、食べてみて下さい』
って言って、自然農の畑に生えてる野菜をその場で摘んで渡すだけで
『農薬も肥料も使わずにこんなにできるなんてすごい!それに美味しい!!』
という反応を頂くのが当たり前になってきていました。
けれど最近、学生さんへの授業(今年の春から農業実習の講師をしてる)
をやっていて思い知らされることがあります。
ぜんぜん響かない(^q^)
反応が薄っっすい(´౪`;)
【多くの人は自然農どころか農業自体知らない】
オーガニックもそうだけど、自然農というのはもっとニッチな分野。
そこにどっぷりと浸かり過ぎていて、
世間一般の人の反応や認識はこれくらいなのだということを忘れかけていました。
今日は、実際にうちのソラマメ(自然農)と
実習圃場で収穫したソラマメ(無農薬有機マルチ有り)のソラマメと
同じくスナップエンドウを茹でて食べ比べしてみました。
これがその時に出したうちの自然農で育てたソラマメ。もちろん美味しい…と私も妻も農場スタッフさんも感じていましたが、学生さんたちの反応は…
この反応が面白かった。
いつものような
『美味しいー!』
という歓声はほとんど上がらず、学生さんの半分は、
『うん、まぁ食べられる…あ、でもやっぱり豆臭いな…』
という普段の畑イベントの参加者さんとは全く違う反応。新鮮過ぎた(´౪`)笑
左がうちの自然農のソラマメで虫食いも少なくきれい。
右のは実習圃場の無農薬有機ソラマメで少々虫に吸われたような痕があります。
野菜が嫌いで食べたく無い人や、お土産に実習圃場で収穫した野菜(無農薬だよ)も持ち帰るのを嫌がる人もいるくらい。
この日の授業の最後にガーリックブレイド作りをやって、作ったものは持って帰って良いよと言ったのだけど、学生さんの内半分は持ち帰らずに置いていきました。買ったら高いやつなんだけどな笑
他の学生さんも『こっちの方が美味しいかな』とか冷静に味を分析したりして、反応は人それぞれではありましたが、いずれも自然農とか無農薬であることに特に特別感を感じている様子は全くありませんでした。
それはある意味、プラシーボ効果のようなフィルターが掛かっていない素直な反応だったのかもしれません。
1番良い反応をしていたのは引率の先生とスタッフさんでしたw
ちなみに、授業をしている相手は調理や流通など食に携わる専門学校の学生さんです。
ちなみにちなみに、その学生さんたちのお昼ご飯は半分くらいの人がコンビニの菓子パンとか。たまにスナック菓子と缶ジュースだけの人もいる。
親御さんが作ってくれたであろう手作り弁当を持ってきてる人もいる。
このことにアレコレ言いたくなる気持ちが湧いたりするのはひとまず置いといて、これが現実。
その上で、オーガニックや自然農の食品や農法をどうしていくのが良いのか?
それを改めて考える刺激になりました。
【理由や違いがわかっても価値や意味を感じなければ安いものを買う】
無農薬栽培やオーガニックの食品は一般的な栽培方法(栽培時に農薬や化成肥料、加工時に人工合成添加物使用)のものに比べて割高になります。
それは、生産時にコストが掛かることに加えてニーズが少ない
(正確に言えばニーズはあっても多くの消費者が希望する販売価格に見合っていない)
為に安定的な大量生産体制にしずらく、それが価格を下げにくくする理由にもなっています。
まずはその理由や違いを理解してもらわなければ始まらないのですが、
今回のことのようにそもそも多くの人は、そこまで興味が無いんです。
生産者側はまずそのことを認識するところから始めないと、仕事としてやり続けることに大変な苦労をします。
新規就農を希望する人の中で半数以上は有機農業に興味がありやりたいと思っているものの、現状の有機農産物の流通量も栽培面積も全体のたった0.5%ほどです。
つまり、99.5%は慣行農法(農薬や化成肥料などを使用する農業)
政府は2050年までに有機農業の割合を、この0.5%から50倍の25%まで増やそうというみどりの食糧戦略に乗り出しました。
30年かけてようやく全体の四分の一を有機にしようという計画。
この数字が現実的なのか、無謀なのか、はたまた消極的なのか。
さてさてどうなっていくのか。
私自身は自然農で我が家の食糧自給率を60%くらいにするのを目指しながら見守っていこうと思っています。