ベトナム人技能実習生の日本離れの兆候が出てきた。昨年の流入数は21年は台湾が日本を抜き1位になった。
さらに、オーストラリアなど賃金や待遇が日本より好条件な国が増え、ベトナム人の選択肢が拡大している一方で、円安に伴う賃金目減りも要因となっている。
コロナ禍前の2019年まで、ベトナム人の海外労働者派遣数は日本が1位。しかし円安で日本の賃金水準がオーストラリアの半額に落ちてきている。
ベトナムドンに対し、円は年初から20%近く安くなる一方で、ベトナム内国の最低賃金は7月、5・9~6・1%上昇し、わざわざ日本に出向くインセンティブが低下している。 一方、ベトナムとオーストラリアは今春、農業労働者の派遣・受け入れで協定を結び、9月から募集を始めることになる。
年間1000人と極めて限定的ではあるが、賃金水準は高く、1年のうち9カ月働き、3カ月は自由行動で月給は3200~4000豪ドル(30万4000~38万円)、すなわち年収ベースでは500万円になる。
日本の労働市場は特殊であり、国際競争の影響を受けにくい。しかし、海外からの安価な労働力が流入しないと、労働需給がひっ迫して、単純労働・現業労働の労賃が上がってくる。
結果として、日本人の労働者の給料が上がる可能性がある。
本来であれば、円安で最高水準の利益を与える企業の賃金が上がってもよいはずだがそうはならない。それは輸出企業においては大企業の割合が高く、そこでは正社員の割合が高く、正社員の賃金は大きな変動が長期雇用慣行の中では起きにくいからだ。
一方で、現業労働、特に都市部での労働需給はひっ迫していて、このように外国人労働力の流入が細ると、結果的に労働力の底上げとなるからだ。